"1922年の初夏、主人公ハワード・ロークは建築工事労働者をしながら建築家めざして苦学しながら通っていたマサチュセッツ州にあるスタントン工科大学を退学になる。学業は優秀だし才能もあるが、大学で教えられる建築学に異をとなえたことから教授達の怒りを買った。
ローマ時代やルネサンス時代などの古典建築を現代風にするだけの建築学に彼は満足できない。その建築物の機能を最大限に活かすデザインと建築法と素材を妥協なく彼は求める。彼のデザインと見解は、教授達にはそれまでの建築の美意識を否定する傲慢さに見える。
彼は私淑していた高層建築家であり、今は落ちぶれているヘンリー・キャメロンのニューヨークにある建築事務所に就職する。ロークにとってキャメロンは真に才能あるプロなのだが、時代はキャメロンについていけない。同様に、キャメロンを理解できるロークの仕事も、また理解されない。
小説は、彼が一流の建築家として名実ともに認められる約18年間の苦闘を時間軸に沿って、舞台を主にニューヨークにおき、描いている。
この小説は単なる成功物語ではない。
ロークの建築観は彼の世界観、人間観、人生観と結びついていて、それらは彼の生きる時代ばかりでなく伝統的それらと真っ向から対立する。
この小説は、ロ-クの思想闘争でもある。小説は、彼と3人の男と1人の女との関わりを通して描かれていく。"